投資を続けていると、うまくいく時期があります。
買ったものが値上がりして、口座の数字がプラスになっている。見るたびに増えていて、なんだか嬉しい。「自分、意外とセンスあるかも」。そんなふうに思えてくることもあります。
その気持ちは、とても自然です。頑張って始めた投資が報われているように見えれば、嬉しいに決まっています。自信が少しつくのも、悪いことではありません。
ただ、ここで一度だけ立ち止まっておきたいことがあります。投資では、下がって苦しいときだけでなく、上がって気分がいいときにも、判断が難しくなることがあるのです。
利益が出ているときは、嬉しさや自信から気が大きくなりやすくなります。「もっといけるはず」と金額を増やしたり、一度うまくいった方法を過信したりすると、流れが変わったときに大きく揺さぶられることがあります。
大切なのは、上がっているときも下がっているときも、その場の気分で動かないことです。最初に決めた自分のルールや距離感に戻ることで、調子のよい時期ほど判断を崩しにくくなります。
利益が出て嬉しい。その気持ちは自然なもの
まず、利益が出て嬉しいこと自体は、否定する必要はありません。
投資には、うまくいかない時期もあります。下がって不安になることもあります。だからこそ、プラスになっている時期は素直に嬉しいものです。「続けてきてよかった」「始めてみてよかった」「少し分かってきたかもしれない」。そう感じることは、投資を続けるうえで悪い感覚ではありません。
問題は、その嬉しさや自信が、少し大きくなりすぎたときです。気分がよくなると、人はどうしても判断が甘くなります。普段なら避けるようなことも、「今なら大丈夫」と思えてしまう。その入り口に、早めに気づいておきたいところです。
実は、勝っているときのほうが判断は難しい
多くの人は、投資で警戒する場面というと「下がったとき」を思い浮かべます。損をしたくない。怖い。これ以上下がったらどうしよう。そういう不安があるからです。
でも、心理的に足をすくわれやすいのは、実は「上がって気分がいいとき」かもしれません。
下がっているとき、人は自然と慎重になります。不安だからこそ、考えます。守ろうとします。ところが、上がっているときは気持ちがゆるみます。「うまくいっている」「自分の判断は合っていた」「この流れはまだ続くかもしれない」。そんな感覚が、警戒心を少しずつやわらげてしまいます。
怖いときより、調子がいいときのほうが危ない。投資では、そういう場面もあります。含み損が苦しいときの心の動きについては、含み損が怖い・暴落が苦しいときに読む話でも整理しています。今回はその逆、「勝っているとき」の心の動きの話です。
勝っていると、少しずつ気が大きくなる
利益が出ていると、人は少しずつ気が大きくなります。
「自分は投資に向いているのかもしれない」「この調子なら、もっといけるはず」「次も、たぶんうまくいく」。こういう気持ちは、自然とわいてきます。
もちろん、自信を持つこと自体は悪くありません。問題は、その自信がリスクの感覚を鈍らせることです。
最初は慎重だった人でも、勝ちが続くと、だんだん大胆になります。「これくらいなら大丈夫」「少し金額を増やしても平気だろう」「前も勝てたから、今回もいけるはず」。そうやって、知らないうちに基準がゆるんでいきます。気づいたときには、最初の自分なら選ばなかったような無理をしている。これは、投資ではよくあることです。
うまくいっているときほど、自分の感覚が少しずつずれていることに気づきにくくなります。
「増えた分」は、まだ自分のものと言い切れない
もうひとつ、覚えておきたいことがあります。画面に表示されている「増えた分」は、まだ確定した利益とは限りません。
含み損が「まだ確定していない損」であるように、含み益も「まだ確定していない利益」です。今プラスに見えていても、それは今この瞬間の評価です。この先、数字は変わる可能性があります。
もちろん、増えている数字を見るのは嬉しいです。それは自然なことです。ただ、それを「もう手に入れたお金」として扱いすぎると、気持ちが大きくなりやすくなります。増えた前提で金額を増やす。利益があるから大丈夫だと思って、リスクを取りすぎる。少し下がっただけで、増えていた分が消えたように感じて苦しくなる。こうなると、数字の動きに気持ちが振り回されやすくなります。
増えたことは嬉しい。でも、まだ動く数字でもある。このくらいの距離感で見ておくほうが、心は落ち着きやすくなります。
勝っているときにやってしまいがちなこと
勝っているとき、人は気分に押されて動きたくなります。よくあるのは、次の2つです。
① いつもより大きく賭けてしまう
ひとつ目は、勝ちに乗って金額を大きくしてしまうことです。うまくいっていると、「もっと増やせるかもしれない」と思いやすくなります。
最初は少額で慎重に始めていたのに、気づけば金額を増やしている。いつもなら怖いと思う額でも、利益が出ていると大丈夫に見えてしまう。ただ、金額を大きくした分だけ、流れが変わったときの揺れも大きくなります。上がっているときは気持ちよくても、下がり始めたときに同じ金額を冷静に見ていられるかは別の話です。
② 一度勝ったやり方を過信する
もうひとつは、一度うまくいったやり方を繰り返してしまうことです。「この方法で勝てた」「この銘柄の選び方は合っている」「このタイミングならいける」。成功体験は、自信になります。
ただ、その自信が「次も同じで大丈夫」という思い込みに変わることがあります。一度うまくいったことが、次もうまくいくとは限りません。市場の状況も、自分の判断材料も、そのときどきで変わります。それでも、勝った直後は過去の成功が強く残ります。だからこそ、同じやり方をもう一度やりたくなるのです。
どちらにも共通しているのは、冷静な判断というより、勝っている高揚感が背中を押している点です。恐怖で動くと判断を誤りやすいように、高揚感で動くときも、判断はぶれやすくなります。
上がっても下がっても、自分のルールに戻る
では、どうすればいいのでしょうか。答えは、下がったときと大きく変わりません。大切なのは、上がっているときも下がっているときも、その場の気分で動かないことです。
どのくらいの金額で関わると決めていたのか。どういうときに見直すつもりだったのか。何を目的に始めたのか。どこまでなら自分は落ち着いていられるのか。勝っているときも、負けているときも、そこに戻ることです。
感情が大きく動いているときほど、自分のルールは役に立ちます。下がって怖いときには、支えになります。上がって気が大きくなったときには、ブレーキになります。上げでも下げでも、共通して言えるのは「気分で動かない」ということです。
事前に決めておくことの大切さについては、損切りができない理由や自分に合った投資スタイルの見つけ方でも整理しています。
今の自分の状態を確かめる視点
最後に、今の自分の状態を少しだけ確認してみましょう。次の中で、当てはまるものはあるでしょうか。
当てはまるものが多い人は、今がいちばん気をつけたい時期かもしれません。調子がいいときほど、一度立ち止まって、最初の自分の距離感を思い出してみてください。
自分のクセを知っておくと、調子がいいときにも崩れにくい
利益が出ているときに気が大きくなる人もいれば、逆に早く利益を確定したくて落ち着かなくなる人もいます。どちらが良い悪いではありません。自分の反応のクセです。
大事なのは、自分がどんな場面で判断を崩しやすいかを知っておくことです。上がったときに強気になりすぎるのか。下がったときに怖くなりすぎるのか。利益が出るとすぐ確定したくなるのか。勝ちが続くとルールをゆるめやすいのか。こうした傾向が分かっているだけでも、少し距離を取って自分の判断を見られるようになります。
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まとめ:勝っているときほど、最初の距離感に戻る
利益が出て嬉しいことは、自然なことです。うまくいっている時期に、自信がつくのも悪いことではありません。ただ、投資では、気分がいいときほど判断が甘くなることがあります。
もっといけるはず。次も勝てるはず。少しくらい大きくしても大丈夫。そう思い始めたときこそ、一度立ち止まるタイミングです。利益が出ているときも、増えた数字はまだ動く可能性があります。勝っている高揚感に押されて、最初の自分なら選ばなかったリスクを取っていないか。そこを見直してみてください。
上がっても下がっても、戻る場所は同じです。最初に決めた距離感。自分が落ち着いて続けられる範囲。気分ではなく、あらかじめ考えたルール。調子がいいときほど、そこに戻る。それだけでも、投資との付き合い方はかなり落ち着いてくるはずです。